「KOTOKO」感想
塚本晋也監督、cocco主演映画「KOTOKO」をNetflixで鑑賞。
監督 : 塚本晋也
製作 : 塚本晋也
原案 : cocco
2011 / 日本 上映時間 : 91分
◯解説
「鉄男」「六月の蛇」の塚本晋也監督がシンガーソングライターのCoccoを主演に迎え、苦しみもがきながらも愛する息子を育て、懸命に生きるひとりの女性の姿を描き出したドラマ。ひとりで幼い息子の大二郎を育てる琴子は、世界が“ふたつ”に見える現象に悩まされ、歌っているときだけ世界が“ひとつ”になる。神経が過敏になり強迫観念にかられた琴子は、大二郎に近づくものを殴り、蹴り倒して必死に息子を守っていたが、幼児虐待を疑われて大二郎と引き離されてしまう。そんなある日、琴子の歌に魅了されたという小説家の田中が現れるが……。2011年・第68回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で、同部門の最高賞にあたるオリゾンティ賞を受賞した。(映画.comより)
◯予告
点数 : 80点!
予告を観ても感じられるが、まず何と言ってもこれぞ塚本晋也監督の映画だなという印象を受けた。映像の迫力、緊張感に圧倒される。
これまでに塚本晋也監督の作品は「鉄男」「鉄男THE BULLET MAN」「野火」を鑑賞した。それらと同様、カメラの動き、音楽の使い方が世界の異世界へと連れて行かれてしまった感覚がして、登場人物の絶望感や狂気が伝わってくる。
◯過去作
鉄男
鉄男 THE BULLET MAN
野火
特に印象的だったシーンは途中で差し込まれる、機関銃でこちらを撃つシーン。
この映像はKOTOKOが家のテレビで観ているものだが、何度も繰り返される。
これによって戦争の恐怖、KOTOKOにとっては自分の子の命が危険にさらされることに対する恐怖が観ている側に突きつけられる。
今作は監督が以前から歌や世界観など好きだと言っていた(下のインタビューより)歌手のcoccoを主演に起用している。それだけでなく映画内でKOTOKOが歌う曲をcoccoが作詞作曲している。映画終盤でKOTOKOが田中の目の前でアカペラで歌う長回しシーンがあるのだが、これがとても良い!coccoの歌声が低めで好みであるのとプラスで、歌っているときの表情の変化が素敵!coccoは二階堂ふみと水原希子を7:3で配分したような顔なんだけど、可愛らしくもミステリアスにも見えるとこが良い!
coccoの歌は下に↓
◯coccoの曲
監督インタビューを聞いて驚いたのは、他人が2重に見える演出で双子を起用していること。通常であればカットを割って、一人に対して2回撮影を行うことで行うところを今作では、双子を使うことで行っている。また2重に見えるという案は監督がcoccoと映画の企画を行う段階で、coccoから一番初めに聞いた実体験であるということ。実際に体験していることであるからこそ、突飛な設定であってもリアリティがある作品になっていると感じる。こういう製作の裏話は映画を観てから知ると映画がより面白く感じられる。
また今作の2重に見えるという設定は、KOTOKO(coccoはどうか分からないが)にとって人の"善"と"悪"の部分が分かれて見えていることを示していると感じた。普通、自分にとって他人は完全な善、完全な悪の存在ではなくあくまでグレーな存在である。それがKOTOKOにとっては分離して見えているということだと思った。この設定は自分がその当事者であれば本当に恐ろしいものだと思う。他人の完全な悪の部分が、自分に対して敵意を見せていることが完全にわかってしまうから。
さらにこの設定に関して気になることがある。それは敵意をむき出しにしてくる他人の悪の部分が、KOTOKOに襲いかかってくるのだけど、映画の前半ではKOTOKOがその他人をボコボコにしている。それに対して、映画の中盤では田中の悪の部分にボコボコにされている。これは多分息子の大二郎(字はあっているか分からない)が自分の手元を離れたことで、今まで居た守るべき存在がいなくなったことが理由だと思う。
※追加
KOTOKOは大二郎を守る側から、田中によって守られる側になったことによって、世界が2重に見える症状が消えたのだと思う。
これは監督のインタビュー最後のメッセージからもなんとなく推察できると思う。
監督インタビューは下に↓
◯監督インタビュー
◯ちょこっと補足
今作は映画を通して、リアリティラインは中の上くらいだと思っているんだけど、途中で、リストカットしたKOTOKOの出血を止めるために、田中が何度もタオルを取りに行くなどちょっとしたギャグシーンがあるところも見所!あとはやっぱり俳優としての塚本晋也の感じが好きだな!